本物の素材と伝統の技術でつくる、温故知新な木の家づくりを現場単位で公開しています

2011年04月06日

伝統的な住宅のメリット

先月のコラムの最後に今月のテーマを予告していました。

その矢先、3月11日に東日本大震災に見舞われました。

そしてありとあらゆるものが失われました。

同時に人間のつくりだす物が、自然の前ではいかに無力であるかと

いうことも見せ付けられました。

どんなに賢い人が考えても、どんなに頑丈につくっていても

自然の前では歯が立ちませんでした。

私たち現代人はいつの頃から自然を支配している錯覚に

陥っていたのでしょうか。

少なくとも私たちが知っている昔の人たちは自然の脅威を

受け入れながら共存をしていたのではないでしょうか。

超えられないハードルをあえて超えようとしない生活を

していたように思えます。

先月は伝統的な木の家のメリットを必死に考えていました。

考えなければ、これだ!といえるメリットが見えなかったのです。

良くも悪くもこの震災の後、しばらくしてこのテーマが自分の中で

スッと納得できました。

やっぱり日本の家づくりは「伝統的な木の家」がベースに

なるべきだと思います。

環境に最も負荷をかけず、地域の材料、地域の技術だけで

建てることができる唯一の工法であり、

唯一自然に逆らわない建て方だからです。


強度や性能うんぬんの話のもっともっと上位での議論です。

今回のような災害や復興にも強い建物といえます。

傾いたり、歪んでも、比較的直しやすい建物だと思います。

今の合板に頼った建物は、傾いたり歪んだら壊すしかありません。

壊せば全てゴミになります。環境にも悪影響を与えます。

これから建設が見込まれている仮設住宅も、ほとんどが合板でつくられます。

スピードを重視する為、いたし方ないように思えますが、

結局合板に頼るがゆえに、今度は資材が調達できなければ建設ができないわけです。

現在まさにその状態に陥っていることは皆さんもご存知だと思います。

スピード重視のプレハブ住宅のはずが、本末転倒です。

今の家づくりはあまりにも周囲の状況に振り回される産業になってしまいました。

複雑になりすぎた建設システムは、諸刃の剣だったのです。

マイペースな伝統的な木の家は、周りの影響を受けにくく、

資材や物流によって家づくりが寸断されてしまうということも少ないと思います。

材木、土、紙などは、比較的身近な範囲からも供給できることが予想される

からです。

つまり決定的なメリットになるかどうかは、それぞれの価値観ですが、

ムキになって、何もかも自然と対決するような現代の家づくりよりも

少し前まで当たり前だった自然を受け入れるような伝統的な家づくりの方が

素直であり、長い目で見て色々な場面でメリットがあるように思うのは

私だけでしょうか。
posted by KEYAKI at 00:21| Comment(2) | 今月のコラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月16日

木の家が高いのは何故?

よく色々な方からこう言われます。

「伝統的な木の家はいいけど、高いんでしょ?」

高い安いというのは

それぞれの価値観にもよりますので、

一概に「高いです!」とは

言いませんが、世間一般に建てられている

建売住宅や、大量供給型の住宅と比べると

相当高いものになると思います。

ただ、私は決して高いものとは思っていません。

長く使っていただけるもの、

愛着の沸く住宅としては

適正な価格だと思いますし、

住宅の寿命で考えていただけるのであれば、

むしろ安いものだとも思っています。

では何故そこまで価格に差が出てしまうのか?

この疑問を紐解いてみましょう。

まず、価格に差が出る大きな要因として3つ

挙げることができます。

@ 造りかたが違う

A 資材内容・建材価格が違う

B 職人の賃金が違う


1つ目の造り方が違うというのは、

そもそもの造り方が違うということです。

一般的な住宅の場合

施工に時間がかからない事を第一に考えますので

基本的には電気工具と金物だけを使えば組み立てられる

ように出来ています。当然骨組みを加工するのも工場で

機械が加工します。無駄を省くことと時間を短縮するという

意味では、見習わなくてはいけないような点もありますが、

正直丁寧な仕事とは思えません。

一方私たちが造っている住宅の場合

基本は大工の手刻みによる仕事になります。

工場での機械加工に頼ることもありますが、

どちらにしても最後まで骨組みが見える

真壁(しんかべ)構造になります。

間違いやキズが許されない化粧仕事になりますし、

家具等も造り付けになりますので時間も掛かります。

当然電気工具だけでは仕事が出来ませんので、

刃物や玄翁(げんのう)など昔ながらの手道具も

フル活用させなければいけません。

2つ目に使っている資材や建材の価格についてです。

これについては単純です。

使っている素材が流通に乗り

大量生産されている建材を使っているか、

少量生産で素材づくりにも

時間や手間が掛かっているものを使うのかということです。

また、1年間に数百棟数千棟建てている業者と

数棟建てている業者では、仕入値も違います。

これに関しては悔しいの一言に尽きますが、

物件数が多い業者程スケールメリットが出るということです。

業者によっては、メーカーとタイアップして、

別注の材料を大量に安く作らせている例も珍しくありません。

私も木材等は直接山から仕入れたり、

建材も一次問屋から納入するなど

中間流通をカットするようにはしていますが、

この点については大手にはかないません。

最後に賃金についてです。

人件費については、

あまりオープンな情報にはなっていないと思います。

地域によってもかなりの差があると思います。

ただ、建物の総工費のうち、6割以上は人件費が占めています。

材料費の中にもその材料を作るための人件費が含まれていますので、

かなりの割合で人件費が含まれることになります。

1つ目の造り方の問題も、時間が掛かればその分人件費は

大きくなります。

例えば大工さんの人件費を例に取ってみましょう。

私が日頃からお願いしている大工さんには

一日あたりの日当として21,000円〜23,000円程度です。

交通費や道具の損料なども含めた込み込みの金額です。

1年間に換算しますと、

約300日働いた計算で6,300,000円〜6,900,000円

が年収になります。

サラリーマンではありませんので

税金はもちろん、年金や保険料などもここから支払っていきます。

怪我や病気になったり、仕事のつなぎがうまくいかなければ

当然日当が入ってきません。

有休のようなこともありませんし福利厚生もありません。

仕事を辞めた後の蓄えも必要でしょう。

彼らは伝統的な技術を持った一流の職人ですので、

私としてはこれくらいの給料はごく普通だと思っています。

ところが、世の中の多くの大工さんたちは

日当計算で20,000円に満たない金額で働いています。

10,000円位にしかならないという話も聞いたことがあります。

もちろん技術が伴わなければそれ相当の給料ということに

なるのでしょうけれども、ローコストの背景には

末端で働いている職人さんたちが安く働かされている現実があります。

こういった理由から建物の総額に大きな差が出ているのです。

どう頑張っても私たちの造る住宅では、

価格帯を現在の一般住宅に近づけていくことは出来ません。

健全な木の家にならないからです。

もちろん伝統的な木の家が全て良い訳ではありません。

デメリットも多い事から、

数が減っている現実は受け止めなければいけないと思っています。

ただ、こういった背景の中で現代の家づくりが進められていることを

知っていただき、

伝統的な木の家にも関心を持っていただけることを

願っています。

よくよく考えてみると、

決して高い買い物ではないはずですよ。

来月のコラムで伝統的な木の家のメリットについて

お話したいと思います。
posted by KEYAKI at 23:22| Comment(0) | 今月のコラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月04日

大家族で住む意味

新年あけましておめでとうございます。

今年も良い家づくりを実践していきたいと

思っております。よろしくお願いします。

さて、毎年年末はバタバタと現場を納め、

最後に職方を集めた忘年会で幕を閉じます。

その賑わいが不思議なくらいに年始は

静かなスタートになります。

皆さんはいかがでしょうか?

私は那須のモデルハウスで

家族と共に新年を迎えています。

家族が揃うと、いろいろな事が

スムーズに動くことを感じます。

いつもはあれもこれも自分でやらなくてはいけない事を

家族が分担してくれるからです。

特に子供の面倒を両親が見てくれる

だけでも、こんなに楽な事はありません(笑)

そんな事を感じながら、

大家族で住む意味を考えていました。

振り返ると日本の家族は皆大家族で

住んでいた時代がありました。

むしろ核家族化が進んで、

家族がバラバラになり始めたのは

戦後65年余りだと思います。

私の先祖も昔は田舎で大家族で暮らしていましたが、

今は住まいは別になりました。

都会に仕事を求めるようになった現代人にとって、

核家族化は当たり前のようになってしまいました。

家族がバラバラに暮らすことで、

生活には相当な影響が出ていると思います。

その顕著な部分の1つが子育てです。

育メンという言葉が流行語になる程

夫が子育てに積極的になり、

保育所に入る事が出来ない待機児童が増え続けている現実があります。

きっと大家族で住んでいる家族にとっては、

あまり縁の無い状況ではないでしょうか。

両親と一緒であれば、子供の面倒や家事までもある程度を

任せる事ができます。

家族の中で個人の役割分担がはっきりしていると

一人一人が楽に生活できます。

私もそうですが、仕事にどうしても大部分の時間を

裂かれてしまう状況の中、

他の事まで完璧にこなそうとしてもそれは不可能です。

ただ、両親がいない中では

私が分担しなくてはならない事がたくさんあります。

今の状況ではそれさえも中途半端になってしまうのが現実です。

私一人が持っている時間だけでは

家族の生活を満足させることは難しいのです。

これと全く同じ事が家づくりにも言えます。

現代人は家を建てるときに、

親から独立して自分の家族だけの家を求めます。

それも家だけでなく、土地からです。

一般的な30代のサラリーマンが組める銀行ローンは

35年のフルで3000万円〜5000万円程度でしょうか。

もちろん収入の多い人はある程度お金で解決が出来ますが、

多くの人が、頭金と銀行ローンで

土地を購入し家も建てなければなりません。

土地の安い地方ならともかく、

多くが都心で仕事をしている人々です。

通勤圏内で敷地を探すとなれば、

ローンのほとんどは土地代となってしまい、

まともな家を建てることは出来ません。

価格の安い建売りやマンションが売れる理由は

この辺にあります。

少し俯瞰してこの現象を眺めてみると、

とても大変で無駄なことをしているように感じます。

一世代一世代で完結した家づくりでは、

なかなか満足した家に住むことは叶いません。

現代の日本の家づくりは多くがこういった

貧しい家づくりになっています。

諸外国からウサギ小屋と皮肉られてしまうわけです。

私はこの現象を解決する方法のひとつとして、

都会でも昔のように大家族で住むことが

糸口になると思っています。

地方から出てきて一世代目では仕方がありませんが、

両親や祖父母の時代に出てきている世代は

すでにこちらに家族の住まいがあります。

もし家を建てる計画があるのであれば、

一度、両親や祖父母との同居を考えてみてください。

両親が支援してくれたり、

土地があるだけでもありがたいはずです。

たとえローンを組んだとしても、

建物の分だけを組めばいいのです。

先程の3000万円〜5000万円を建物だけに当てられれば、

相当いい建物が建てられます。

結果的に長持ちする建物にもなります。

今の我々の世代は、良くも悪くも親から自立しようと、

独立した住まいを求める傾向にあります。

両親との関係を良好に保とうと、

ほどよい距離を置こうとします。

同居のデメリットばかりを考えて行動してしまいます。

ただ、長い人生の中で色々なことを考え、

経験をすると同居するメリットも

相当な量あることがわかります。

同居をしても家の中で程よい距離感を保つ事は

住宅計画次第でいくらでもできると思っています。

もし両親が近くにいて一緒に住む可能性がある皆さんは

同居という選択肢を視野に入れてみてはいかがでしょうか。

きっとこれからの生活を豊かにしてくれるはずです。
posted by KEYAKI at 09:44| Comment(0) | 今月のコラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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