本物の素材と伝統の技術でつくる、温故知新な木の家づくりを現場単位で公開しています

2010年12月17日

設計・施工体制へのこだわり

完全に遅れてしまった今月のコラムは

設計・施工にこだわる理由について

少しお話したいと思います。

けやき建築設計は、5年ほど前に

設計事務所としてスタートしました。

世の中で言う設計事務所とは、

クライアントから依頼を受け、要望に沿ってデザインをし、

設計図書をつくり法的な事務手続きを行い、

施工は施工会社に任せ、工事を監理するというのが

一般的な仕事内容になります。

当社もこういった仕事の流れを分かった上で、

事務所をスタートさせました。

ところが、5年経った今、実際にやっている仕事の内容は

設計・監理だけにとどまらず、

施工まで手を広げている状況です。

ではなぜ、当社が施工にまで踏み込むようになったのでしょうか?

それにはいくつか大きな理由があります。

@ 時間の短縮、建物精度の向上

A 全責任を自らが負える

B 急な変更が容易、コスト調整が可能


まず@ですが、時間の短縮は、

結果的に引渡しまでの時間が短くなるということです。

設計と施工が分離している場合、

完全に設計が終了した段階で、初めて工務店にその情報が

伝わり、そこから見積もりや調整が始まります。

相見積もりであれば、数社とやり取りをし、

質問に答え内容をチェックした後、折り合いをつけて、

ようやく工事契約ということになります。

他の業者さんにはお断りの電話連絡もいれなければいけません。

施工期間中は、検査や、確認などに改めて時間を

裂かなければいけませんので、

どうしても余分に時間が掛かってしまいます。

その点設計・施工の場合は、設計の時点で、総予算や、施工の状況を

見極めながら、進めていますから、設計が終わってまもなく

見積もりを提示し施工に進むことができます。

もちろん設計の段階から、材料を発注したり

材木を乾燥させておいたりということもしますので、

もともと時間の掛かる

伝統的な木造住宅づくりにはメリットが大きいわけです。

検査や確認なども誰かを待つことなく、

自分のタイミングで行う事ができます。

結果的に時間が短いということは、

経費も少なくて済むということになります。

それから、建物の精度が上がるというのは、

間違いが少なく、建物が綺麗に仕上がるということです。

建物のデザインやこうしたい!と思う気持ちの一番強い

人は紛れもなく設計者です。

設計者が最もその家の見せ方や使い勝手を把握しています。

その人が、実際に物をつくってくれる職人さんに直接話が出来、

指示が出来るということが最も間違いがなく、スムーズだと思うのです。

そこに現場監督や担当者と名乗る人物が色々と絡んでくると、

話がややこしくなるばかりで、ちっとも良くならないのです。

関わる人数を極力少なくするということです。

次にAですが、これは法的なことにもつながります。

工事を行って、何か不具合やトラブルになった場合、

大きく分けて設計瑕疵か施工瑕疵になります。

両方というのもあるかもしれませんが、

建主さんからすれば、とにかく不具合が解消されれば問題ないわけです。

ただ、設計と施工が分かれていると、どちらの責任なのか、

製作サイドでもめる事も少なくありません。

設計者は施工が悪いから瑕疵になったと主張しますし

施工者も設計が悪かったから、瑕疵になったと主張します。

よくある擦りつけの構図です。

設計・施工であれば、良くも悪くもそういった責任から逃れられません。

自分が全責任を負うのです。

ただ、逆に全責任を負えるデザイン、施工をすればいいのですが、

どちらにしても建主さんには分かりやすいのではないかと思います。

最後にBです。工事内容というのは、設計図書に基づいて見積もりしたもので

決まっていきます。勝手に施工者が仕様を変えたり、設計者が気分で変えたり

してはいけません。ただ、工事というのは必ず何かが起きるのです。

トラブルであったり、ミスであったり、材料の不足であったり、

素材や形をどうしても変更したくなったりするのです。

こういった場合、設計と施工が分かれている場合は工事が一時ストップします。

方針を考え、報告し、検討して、建主さんに報告してからようやく再開です。

お金に関わる話であれば、お金を決めなくては前に進めません。

こういった手順を踏まないで進めると、後でトラブルになります。

設計・施工であれば、自分が納得出来れば、

後は建主さんに報告して了解を得るだけです。

変更金額があれば決めなくてはなりませんが、

その金額が自分の中で処理できる金額であれば

問題にすることすらない場合もあります。

変更の自由度に幅があるということです。



こういった理由から、

いつしか設計・施工に携わる設計事務所になりました。

お陰様で、今では現場の職人さんたちからも、信頼される?

監督としてのポジションが定着してきました。

どうしても現場に来る回数の少ない設計者は

現場ではよそ者扱いになってしまいます。

(以前はそんな空気を感じながら現場に行っていました)

同じ建物をつくる同士として本当は

一丸とならなければいけないのですが、

単発で来る人になかなか職人さんたちは心を開いてくれません。

やっぱり現場の状況を共有できるようにならなければいけないのです。

図面だけ渡して後はヨロシクではいい建物にならないということです。

ただ、ここに書いたことを鵜呑みにすると、

良いことだらけのように思いますが、ちゃんとデメリットもあります(笑)

まずは、物件数がこなせないということ、

遠い場所では出来ないということ、

デザインが少し守りに入るということ。

それから、建主さんと万が一トラブルになったときに、

仲裁役がいないので事がスムーズに運べないということ等です。

日本では昔から設計と施工を分離するというシステムが成り立っています。

それには、色々な事情があることもメリットがあることも知っています。

ただ、小さな木造住宅をつくる場合くらい、

設計と施工が分離していないほうが

デメリットをメリットが上回っているように今は感じています。


昔は大工棟梁がまとめていたわけですから…

ただ、この体制も私の気力と体力が持続する間に限るかもしれません。

正直体は昔の倍以上疲れています。車もセダンからトラックに変わりました。

それでも続けたいと思うのは、自分の気持ちが最後まで届くと

仕上がる建物が輝いて見えるからでしょうか。

最後はかっこよくまとめさせていただきました(笑)

PS 信頼している工務店さんとコラボレーションしている物件もあります。
posted by KEYAKI at 00:37| Comment(0) | 今月のコラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月01日

住宅設計者の役割

今月のテーマは設計者の役割について

特に住宅の設計を行っている我々の役割について

少し語ってみたいと思います。

一般的な感覚で設計者又は建築家

といったらどんなイメージでしょうか?

たまたま隣に座っていた妻に聞いてみると、

「偉そうな口を聞く人」という唐突な答えが

返ってきました。図星です(笑)

皆さんのイメージはいかがでしょうか?

日本では設計者・建築家というと何となくカッコいいイメージや

自分とは全く関係のない世界で仕事をしている人という

身近でない存在と思われているのではないでしょうか。

確かに著名な建築家は世界を股にかけ、様々な建築物を設計し、

活躍しています。住宅をつくるにしても、作品性の強いものを

つくっていたりします。

そんなイメージが先行しているせいか、

自分の家をつくる際に、

「まさか設計事務所に頼むなんて」

「自分ちを作品にされてたまるか」

と思っている方が多いのではないでしょうか。

まして、「形にもならない設計料を払うなんてお金がもったいない」

と思っていらっしゃるのではないでしょうか?

そんな意見が一般的であるのも無理はありません。

なぜなら日本の住宅は大工さんたちがつくってきたからです。

今でもかなりの方が「家は大工さんがつくるもの」

そう思っているのではないでしょうか?

もちろん間違いではないのですが…

昔は地域の大工さんに家を頼めば、いい家が建てられました。

そういった伝統的な産業の中に、設計者やハウスメーカーなどが

参入してきたのです。こういった流れが始まって、まだ30年〜40年位しか

経っていないと思います。大工さんたちが家づくりをはじめてから数百年経っていますから

歴史の長さから見ても歴然としています。

ではなぜ、今設計事務所に家づくりを

頼む必要があるのでしょうか?

それは、家づくりを取り巻く環境が日々複雑化し、多様化しているからです。

法律・敷地状況・地球環境・耐震理論・素材・設備システムなどなど

考えなければならないことや知っておくべきことが山積みです。

そんな状況下で情報だけが異常なまでに一人歩きしているのです。

建主さんにとって家づくりは不安要素の塊になってしまいました。

さらに困ったことに、発達した情報網によって偏った知識を持ってしまった

建主さんも増えています(笑)もちろんこだわりを持つことは

とても大事なことだと私は思っていますが、

家づくりのハードルはぐんぐん上がってしまうわけです。

さて、ここからが本題です。

つまり、我々設計者の役割は、その複雑な情報や条件を整理して、

お客さんの希望を盛り込み、安心・安全な形にする指針図を描くということなのです。

もちろん、ハウスメーカーや工務店、大工さんも同じことが出来ると思います。

ただ、検討している時間が短かったり、可能性の間口を広げることはしませんので、

ある程度決められた仕様や形で妥協をしなければなりません。

要するに他人の家づくりをお金儲けのためだけでなく、

思想を持って取り組んでいるのは設計者だけなのです。

ただ、裏を返せば家づくりに情熱がなかったり、ただ安ければいいのであれば

設計者に依頼する価値は無いということです。それはそれで寂しい気もするのですが…

どちらにしても住宅の設計者は皆さんの当初のイメージとはかなりかけ離れた

仕事をしています。デザイン性を追求している設計者も中にはいますが

本当に少数です。特に私が関わっている、伝統的な家づくりのジャンルでは、

現行法の中で、いかに金物を使わないようにするか等、違った意味での

デザインに集中していく必要があるのです。

こういった難しい条件をひとつずつクリアーしていき、

自分たちが一生住む家にこだわりたいのであれば、

計画するためにある程度の時間と費用がかかります。

その費用が高いと感じるかそう思わないかは

それは何ともいえません。

ただ、出来上がった家の満足感や安心感はお金には代えられないものだと、

過去の建主さんたちは言ってくれました。

(私が言うと嘘くさいですが)(笑)

是非とも家づくりに興味を持って、

住宅設計者の役割を感じていただければ、一設計者として幸いです。
posted by KEYAKI at 07:00| Comment(0) | 今月のコラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月05日

なぜ伝統的な木造住宅にこだわるのか

今月から毎月一度、この場を借りてコラムを書いていこうと思います。

記念すべき第一回目はそもそもけやき建築では、

なぜ木造?しかも金物を使わない木造住宅にこだわっているのはなぜ?

というテーマに迫ってみたいと思います。

今や住宅をつくる手段や材料は数限りないほど世の中に存在しています。

昔は家をつくる手段が木や石しかなかったのですが、

今は鉄骨やコンクリートなどを主構造に用いた住宅や、

木造でも集成材と呼ばれる強度をコントロールされた木材を使ったものなどがあります。

その中で私が普通の木造を選択している理由は簡単です。

住宅が木造で出来る規模としては最良だと思うからです。

もちろん例外もありますが、基本的に木造は小規模の建物に向いています。

昔は木造しかありませんでしたから、東大寺大仏殿のような大きな建物も

何とか木造でつくったのですが、今なら鉄骨やコンクリートを使ったほうが

楽に決まっています。木は鉄やコンクリートに比べて強度がありませんので、

あまり大きな空間をつくることが出来ません。

ただ、反面小さな空間なら比較的簡単に早く安くつくることが出来ます。

しかも日本は木材が調達しやすく近くに木造の出来る大工さんも

たくさんいますので、木造で建てる環境や仕組みが整っています。

それに加えて環境にも適した材料で、二酸化炭素もたくさん固定化しますし

植えれば育ってまた数十年後にはまた使うことができます。

永久不滅の材料な訳です。こんないい材料が他にあるでしょうか?

つまり他のつくり方にするまでもなく、木造で十分すぎるということなんです。

それではなぜ木造の中で伝統的な部分にかたよっているのか?という部分ですが、

まず、何が伝統的で何が伝統的でないのか?ということを簡単に説明しましょう。

偉い先生方が難しい説明をたくさん並べていますが、

基本的には構造用の金物を使わずに成立している建て方が

伝統的なつくり方と言えます。大きなポイントは金物です。

よく建主さんに、「釘を使わない建物ですね」なんていう表現をされますが、

昔の建物でも釘は普通に使っています。板を張る場合などは必ず使います。

釘は部材同士を密着させるもので、

金物は、構造に関わる部材同士を緊結させるものです。

つまり金物に頼っている住宅は、伝統的でない住宅になります。

いわゆる在来工法やツーバイフォーと呼ばれるつくり方です。

これらが現木造住宅の9割以上のシェアを占めています。

私がこだわっている伝統的な木造住宅は残りの1割以下に入ります。

たぶん1%以下じゃないかと思います。

ものすごく少数派であることは間違いありません(笑)

なぜ金物を使ったつくり方が主流なのか?という話はまた次の機会に譲ることにしますが、

私が金物を使わない木造住宅にこだわるのは

金物が信用出来ないからです。

皆さんには、なぜ?と思われるかもしれません。

ちなみに構造用金物として世の中に出回っている商品は、

実験等によって国がきちんと認定して、お墨付きがついています。

強度が保証されて施工手順さえ間違えなければ安全だと言われています。

それでも私は金物が信用出来ないのです。

それは、経年変化に対しての安全の保証がしきれないからです。

金物を使った建物の実験結果や強度の数値はあくまで建ててすぐの結果です。

10年後20年後も同じような結果になるかどうかはわかりません。

私は中古住宅のリフォームや耐震診断の依頼を受けることがあります。

その調査の中でほぼ100%の確率で構造用の金物が緩んでいます。

手で回せるものもあるくらいです。

この現象は木造を知っている大工さんや設計者なら誰しも経験があるはずです。

なぜ金物が緩んでしまうのでしょうか?

それは、材料である木が痩せるからです。

木はたくさんの水分を含んでいます。伐られてから材料になる間に

その水分がどんどん抜けて乾燥していきます。

0%になることはないのですが、建物を建てる時には最低25%〜30%位の

材料を使います。それでも時間とともに15%位までは落ちていきます。

水分とともに体積が減りますので、それと共に木が痩せてしまうのです。

この現象を食い止めるために、金物メーカーは緩みにくい金物の商品開発をし、

材木屋さんは木の乾燥や集成材づくりに必死になっています。

その甲斐あってひと昔前より格段に性能は上がっているのだと思います。

ただ、それでもこの先どうなるのかは誰もわかりません。

アスベストも昔はとっても便利でいい材料!というフレーズで

たくさんの建物に使われてきました。後になって、

人体に影響のある材料でしたと言われても、困るわけです。

そういった意味で、私が木造住宅で信頼できるつくり方、

建主さんに胸を張って安全ですよと言えるのは

金物に頼らない昔ながらの伝統的な木組みの家しかないのです。

なんといっても、歴史が物語っています。

100年以上建っている建物はざらに残っていますし、

手入れをしていけば、もっと長く持つことが、現時点で立証されています。

材料が多少湿っていても木と木で組んでいますから、緩むことはありません。

むしろ時間が経つにつれ固まっていきます。

古い民家を解体するとなかなか固くてはずれません。

現代工法に比べ、予算や時間が掛かってしまうということで、

切り捨てられてしまった伝統的な木造住宅ですが、

こんなに日本の風土に合っている建て方はないと思っています。

材料や技術も今ならまだ身近なところにあります。

家づくりを考える際に、少し立ち止まって考えてみてください。

長くなりましたが最後までありがとうございました。来月へ続く。
posted by KEYAKI at 20:13| Comment(2) | 今月のコラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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